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ジュリー。

言うまでもないが、沢田研二のことである。
まだ僕が小学生の頃、タイガース時代からジュリーの大ファンであった母の妹にこんな電話をした。
「今日、家にジュリーが来るんだ。」
「え!ほんと?」
もちろん嘘である。
「う、うん。」
おばさんのパワーに圧倒された子供の僕はそう答えるしかなかった。
「何時に来るの?」
何故(WHY)より前にいつ(WHEN)を聞かれた。
明らかに分かる嘘なのに完全に信じ込んでいる。
何故、一般家庭にジュリーが来るのかなんて疑問はないようだ。
「今からマァちゃんの家に行くね。引き留めといて。」
それは無理。だってジュリーは来ないから。
「もし忙しいって言われたら、サインだけでももらっといて。」
突き進む妄想。ジュリーは来ないから。
僕はこの容易く戻れない迷路に挑むべく、
「今日は何日?」
「なによ。4月1日でしょ?」
「だから。」
「…え?」
「…そういうこと。」
「え??」
永遠に終わらないかもしれない、一瞬の沈黙のあと、おばさんは深く溜め息をこぼすと、失笑したのだった。
わんぱく宣言「次の年も引っかかってくれた。」